オーストラリア映画。
良質なサスペンス映画です。
こういうケレンみのない、しかしストーリーテリングが巧みな映画がしっかり存在し続けて欲しい。けっこう泣ける。俺だけか。
パーフェクト。
スピルバーグは、スペクタクル映画はいいけれど、普通のドラマとなると雑だし、がさつだしで、ミュージカルを撮れるのかしらん、音楽と踊りより人間ドラマに重点を置いてとか新解釈なんざやってラズベリー賞もんかなんか出来上がっちゃうんじゃないかと懸念したが、堂々たるミュージカル映画だ。
前作へのリスペクトが根幹にあって、実に楽しく、しかも、トニー、マリア、ベルナルド、リフのキャスティングに、この時代ならではのリアリティーがあって、ある意味前作よりいい。というか、ナタリー・ウッドがドーラン塗ってプエルトリカンをやるというファンタジーからリアルに移行していて、それが成功している。
今更言うまでもないが、どの曲も耳に残り、ウエスト・サイド・ストーリーの底力を改めて感じさせられた。
変な新解釈への危惧は脚本がトニー・クシュナーと聞いてというところもあった。スピルバーグとのコンビの『リンカーン』は、ふたりともやたら肩に力が入っちゃっててもうつまんないつまんない。今回は、元があり、それへの正当なリスペクトを主軸に置いて、自身の作家性を抑えたところがよかった。それにしてもドクの未亡人をドクの代わりに設定して、それをリタ・モレノにやらせるという秀逸なアイデアは誰が考え出したのだろう。
話は変わるが、クシュナーの『エンジェルス・イン・アメリカ』を大学の劇作の授業で取り上げることが多々あるのだが、学生のノリが概して軒並みよくない。アメリカの政治事情、歴史、ロイ・コーンについて等々、前知識がないとなかなか読みにくいものであるから、丁寧なつもりで解説しつつ読むのだが、それでもわからないらしい。宗教とLGBTQについての実感がないのだろうか。殊にヘテロセクシャルの日本人にとってLGBTQに関しては、せいぜい『おっさんずラブ』止まりの問題意識の薄さなのだろうか。
とにかく、共感できる登場人物がいないらしい。子供だからだろうか。
しかし、私もまたこれまで日本で日本人によって演じられた『エンジェルス・イン・アメリカ』の舞台に一度たりとも共感を覚えたことがない。
人種と宗教の混在が顕在化していない社会で、この戯曲の舞台化は不可能なのではなかろうか。
少年の時期親しんだ『サンダーバード』を今見返すと、大英帝国を中心にした白人英語圏社会が、当時いかなる価値観で世界を俯瞰していたかがよくわかる。
つまり、国際救助隊が、国際を名乗りながらアジアのどこかに出向くということはないのである。
そして去年五月刊行予定だった『大島渚全映画秘蔵資料集』が、やっとというか、とうとう出版された。
図書刊行会が『映画監督神代辰巳』に続いてやってくれた。
アメリカでよく出されるタイプの文字通り重い大型本である。
ワクワクさせてくれる。
大して期待せずに観たら、まあ、面白い。掘り出し物。
小粋なホラー。60年代ロンドンの音楽、ファッションと21世紀のフェミニズムの盛りつけがミソ。
あと田舎出の主人公造形が大いに共感力を発動させるに違いない。おっかない都会というクリシェが嫌味なく作動する。
とにかく面白い!
映画.comの吉祥寺オデヲンにラース・フォン・トリアーの『メディア』上映中とあるのは誤情報ですよ。
オデヲン、私の時間を返してください。
映画.comの責任か。