今月のはじめには、新宿の飲み屋で、およそ二年ぶりに人と飲んだ。
店先で別れ、帰り道、靖国通りからゴールデン街方面に向かう遊歩道を歩いていると、ここで知り合いとばったり。
知り合いは、「今飲んできたところだからもう飲まないよ」などとぐずぐず言っているので、「いや私は帰り道なのです。西武線で帰ります」と言うと、ついてくる。
歌舞伎町の信濃屋でスコッチのシングルモルトだかシェリー酒だかウンダーベルクを買って帰るのが新宿徘徊の常なので、かまわず立ち寄ると、店の中までついてくる。
アードベッグを買い、西武線に乗って隣同士でわいわいと喋る。コロナ禍における人生の在り方についてであった。
日芸の担当以外の授業にゲストで招かれて『ハムレットクローン』とか『AOI/KOMACHI』についてわいわい喋る。
高円寺のカフェで開催された尾崎さんの公演のアフタートークを頼まれて、観劇後、『オール・アバウト・Z』とロボットについてわいわい喋る。
公開審査で無観客の座・高円寺舞台上で悩む。これほどすっきりしない審査会は初めてだ。
来週はまだ喋る日々が待っている。基本的には情緒が安定しない。
この間、レコードプレイヤーを購入し、押し入れの天袋に入れたままのレコードを取り出すと、もう我ながらレアもの貴重ものばかりで、十代二十代の自分を褒める。
吉田拓郎、三上寛、友川カズキ、森田童子、荒井由実(アルバム「ひこうき雲」ね)、柏原芳恵(笑)から、マイルス・デイビスはもちろんのこと、モンク、エリック・ドルフィー!、ロックはドアーズ、ストーンズ、ボウイあたり、プログレはピンクフロイドあたりはまあ当たり前として、タンジェリンドームそしてテリー・ライリーまで手を伸ばしている。テリー・ライリーは今生きているのだろうかと検索したら86歳で現在新潟の佐渡に移住していると知ってびっくり。
パンクはセックスピストルズ。イギー・ポップもある。マイク・オールドフィールド、ディビット・バーン、ノイバウテン、パティ・スミス!レオン・ラッセル!もいる。
ヴェルベット・アンダーグラウンド、ルー・リード、ニコのソロアルバム。
浅川マキ!サイコー、マリアンヌ・フェイスフル!よく聞きました、マリアンヌ・フェイスフル。
かと思えば武満徹。映画音楽のサントラはやまほどある。
変わり種は、とうじ魔とうじ、陰猟腐厭。知ってる人は知っているだろう。知っている人は本当のプロである。この二枚のアルバムは本人たちからいただいたもので、彼らは八十年代の第三エロチカの観客であった。
ジム・モリソンが死んだ後、残ったドアーズの三人で出したアルバム、クルト・ワイルの曲をスティング、マリアンヌ・フェイスフル、ルー・リード、ヴァン・ダイク・パークスらがアレンジしているアンソロジー「Lost in the Stars」などもあって、何か頗るご機嫌だ。